先日、わたしの長唄三味線のお浚い会があり「秋の色種」を弾いてきました。師匠、唄の先生、弟子仲間、ご来場いただいたみな様、ありがとうございました。何とか無事?終えることができました。
昨年のお浚い会が終わった後に、やりたい曲がある人は言ってください、と師匠がおっしゃったので、わたしは「梅の栄」「新曲浦島」「秋の色種」をあげ、師匠がじゃあ色種やりましょう、となりました。色種といえば、「虫の合方」「琴の合方」が有名な曲です。上調子が入ることが多く、これがまたキレイなんです。
ほぼ1年かけて稽古してきましたが、師匠が上調子を入れて稽古するようになってからは苦闘の連続でした。つられちゃうんですよね、上調子に。自分的には上調子が入ってきてからは、別な曲になった感じでした。
お浚い会は、二挺一枚。そうです。タテわたし、上調子師匠、お唄の先生です。これが意味するところは、自分が相当しっかり弾かないと曲にならない、ってことです。特に合方はほとんど掛け合いになるので、そこで自分がこけたら終わりです。今までの曲は基本師匠がユニゾンで弾いてくれ(ところどころ替え手)、自分がこけてもほとんど影響ないんですが、今度は違うわけです。このプレッシャーはだんだん効いてきました。
さて、当日の演奏がどうだったか?みなさんも気になるところだと思いますが、その前に当日朝のプチ失敗がひとつ。爪短くし過ぎました。爪に溝ができると削ったりしていたんですが、本番朝なのでいつにも増してヤスリかけたら短くなり、人差し指でハジクのがやりにくくなっちゃいました。今度から気をつけます(汗)。
舞台に上がり、幕が開きます。師匠の声でチンチンテンといくところ、トンチンテンと…。いやあ、まさか三の糸弾き損なって二の糸弾いちゃうとは。この瞬間自分は相当緊張しているのを自覚しました。もう、特に右手が硬い。あと、胴の位置を少し直したいんだけど、それができない。胴の位置なんか弾く前に念入りに確認するんですが、袴はいてるとズレやすいんですよね。それでも致命的に位置にズレることはなかったは良かったです。
本調子のところはまずまず。さあ、虫の合方です。ここでもミス。お唄が終わりきっていないのに、チンと入っちゃいました。もう、唄を聞く余裕なんてなかったってことです。途中、スカバチしたり、ハジキが甘かったりと、ありましたががまあまあの出来だったと思います。
調子変え、調子変えの決まり文句が少し乱れましたが、調子自体はまずまず上手く変えられました。そうそう、この日は早めに糸を張って十分に伸ばしていたので、変に音が下がることは無かったです。事前の糸のしごきは大事ですね。
さて琴の合方。ここでこの日最大のピンチが来ようとは…。前半の方で、棹の下の方を弾く部分で、手が止まりました。いつもはほとんどオートマチックに動くところなんですが、次どこに動かすか白くなっちゃいました。ただ、かろうじて頭の中でメロディは流れていたので、戻れるところを必死に探します。師匠も異変を感じ少しテンポを緩めてくださり、区切りになるところで軽くかけ声を入れてくださりました。そのおかげもあり、無事元に戻れましたが、あやうく演奏事故になるところでした。
失敗した瞬間は、緊張よりも動揺しました。スカバチとか勘所のズレとかのレベルではなかったので。もう必死に落ち着け落ち着けを自分に言い聞かせていました。これでボロボロになったらいかん。今までの練習を無駄にしちゃいけない。そんな風に考えていたように思います。
そんなんで琴の合方が終わり三下がりです。動揺もあって手に少し汗をかいていて少し滑りましたが、うまく変えられました。この辺り、当日糸をしごいた後シミレーションしていました。巻が変なところでガッシリはまると動かせないので。
三下がりの部分は自分的にもけっこう上手く弾けたかな。竿下の方の難しいところもばっちり勘所押さえられました。
始まればあっと言う間です。18分弱の曲ですがあっと言う間です。幕が閉まった後は、やっちまった感いっぱいでした。二挺のプレッシャーとはこういうことだったんですね。
こう書くと、よっぽど下手くそな演奏だったんだろうな、と思われますが、実は演奏自体はまずまず良かったんですよ。終わった後、みどケロさんや、お弟子さん方にも良かったですよ、と言われていたんですが、その時は失敗のことで頭がいっぱいで素直にそう聞くことができなかったんですね。
お浚い会が終わった後打ち上げがあり、お唄の先生にお礼と失敗してしまいましたとお話ししたら、「確かに上手くいかなかったところもあったかもしれけど、全体的に見ると下浚いのときより音とか凄く良かったですよ」と。……。その時はまだその意味が良くわからなかったんですが、後になって下浚いの音を聞き直してみて、わかりました。
音、音程、勘所、調子変えとかが本番ではけっこう上手くできていたんですね。だから聞いていても割と気持ちいい。あくまで対自分比ですから、念のため。下浚いは特に二上がり以降ひどくて三下がりになるとさらにひどい音でした。調子変えがうまくできていなかったんですね。手的にはあまり大きなミスが無かったのですが、本来はこういった音自体出来の悪さを自覚しないといけなかったですね。
自分は間違ったところに囚われすぎていて、良かったところをたくさん見逃していたようです。もともと難しい曲ですから、今の自分で完璧に弾くなんてことは無理なわけで、そう考えれば、まずまず弾けたと思えるようになりました。
練習で苦労した、虫の合方で棹の下の方から上っていくところの勘所、・ドンドンドンドンドンドン・トテテレテレテレテントンもまあまあできたし、琴の合方後半の凄く細かい手の部分で粒が立てられなかったところも本番が一番上手くできていたし、三下がりのメツメツメサケサラーなんかも本番が一番上手くできたし、調子変えも上手くできた。なんだいっぱいいいところあったじゃん。
お時間のある方は聞いてみてください。
長唄「秋の色種」 2015-03-21 神保町区民館 三味線で参加 *観客席から録音したものです
いろいろあったり、いろいろ考えたりしましたが、「秋の色種」とってもとっても楽しい曲でした。上調子が入ってから、難しくなりましたけど更に楽しくなりました。弾いていてこんな楽しいの初めてかもです。
あと思ったのは、三味線を弾く左手は大事な音のベース部分を担っていて、右手はテクニカル的なことを担っているのかな~、なんて感じました。左手は勘所、調子変えのときに重要な役割を果たしていて、右手はいろいろな奏法で華を添えるみたいな。
右手っていえば、下浚いである姉弟子さんに右手の感じが師匠に似てる、と言われました。みどケロさんにも言われました。これ実は目指しているところです。もちろん音は遠く及ばないなんですが、ちょっとうれしい。
そういえば笛では師匠の師匠に感じが似てるなんてのも最近言われました。これも嬉しい。
さあ、今度の曲何にしようかな。